キューバ23日目(トリニダーで客引き体験)


さて、世界遺産の谷から帰ってきてすぐ、ハバナ行きのバスを探そうと一人でターミナルへ向かった。ビアスールの場合、トリニダーからハバナまでは1日2本、朝の7:30と昼過ぎの1時だ。ターミナルで確認をした時点で朝の便は満席だった。キャンセル待ちのために朝起きるのも気が乗らない。午後の便は開いていたが、6時間もかかる上に到着するのはハバナの新市街ベダードだと言う。面倒だ。ハバナのカーサでは7時に夕食が出る。できればその前にカーサについていたいと思った。

バスターミナルでそうした情報を得た後、午後の便を予約をせずにバスターミナルを後にした。外を歩いているとタクシーの運転手が話しかけて来た。「タクシーアミーゴ?」といういつものアレだ。めずらしく頷いてハバナまでの料金を聞いてみた。25CUCだと言う。ビアスールの料金と同じだ。よくできている。ただしタクシーはカーサまで迎えに来てくれる上、ハバナでもカーサまで送ってくれるというのだ。時間も2時間ほど早く着くので文句なしだ。が、先ほどのビアスールのオフィスで立ち話をしたスペイン人がこう言っていた。

スペイン人:「ハバナまでタクシー?ま、10CUCじゃないかしら。カマグエイからトリニダーでさえ10CUCよ」

なんだってー!と驚愕した俺は、欲が出てディスカウントを目論んだ。

りょう:「おっちゃん、1人12CUCで4人合計48CUCでどうよ?」
おっちゃん「だめ」

有無を言わさぬNOに驚いた。なんだ強気じゃないか。じゃあいいや、というジェスチャーをしてその場を去ったが後ろから声をかけて来てはくれない。この勝負、完全に負けているようだ。そこで別の運転手を見つけてこう告げた。

りょう:「俺があと2人見つけて4人にするから、合計48CUCで行ってくれよ」
おっちゃん「いいぜ」

なんとあっけない。こんなに簡単でいいのだろうか。いや、残りの2人は俺が見つけなければ行けないのだから運転手にしては悪くない条件だ。ハバナに明日帰る人なんてごろごろいるだろう。

さっそく俺は、トリニダーで客引きを始めた。さすがに「タクシーアミーゴ?」とは言わない。あんな声の掛け方じゃ、乗るつもりだったとしても条件反射で「ノーグラシアス」と言ってしまう。俺は偶然持っていたカメラを斜めに書け、わざとらしいロンプラは後ろのポケットに入れ(タイトルの「Cuba」の文字だけは後ろから見えるようにした)上で、和やかに話しかけることにした。狙いは2人組だ。残り定員2名を一気にゲットできる上、1人旅よりも警戒心が薄いのではないかという考えからだ。

りょう:「すみません、明日ハバナに行きませんか?」
りょう:「失礼ですが、明日ハバナに一緒に行ってくれませんか?」
りょう:「聞いてください!ハバナまで12CUCですよ12CUC、ええ、タクシーのシェアですけど・・・」
りょう:「あのー、ハバナなんて・・・行きませんよね?ですよねぇ。」

ことごとく捕まらない。ほとんどがハバナから来たばかりで、トリニダーで数日過ごすか南下する人たちだった。俺の読みは甘かったのだろうか。それとも優しい嘘をついてやんわりと断っているのだろうか。逆に旅行情報を求められる事も多かった。トリニダーの見所はどこか、旅行会社はどこにあるのか、キューバ南部の情報、外国人が人民ペソを使うのは違法ではないのかとしつこく聞かれたこともあった。かれこれ2時間近くも客引き兼インフォメーション係をしていた。

だんだんうんざりして客引きたちの気持ちがわかるようになってきた。飛び込み営業みたいに辛い。断られ続けるのは自分を否定されているような気になっていかん。たとえば、就活で落ちまくったときの気持ち、いや、それはさすがにもっとキツイだろうけど、そういう種類のアレだ。

仕方ない。作戦を変えよう。いますぐ2人を見つけるというのが間違っている。明日の朝、カーサに迎えに来てもらってバスターミナルに寄れば、キャンセル待ちをしている旅行者がわんさかいるだろう。予約をした人がいたとしても、12CUCのディールなら予約をキャンセルしてタクシーに殺到するに違いない。なんとかなるのだ。

そう考えてタクシーの運転手の所へ戻った。

りょう:「おっちゃん、大丈夫だ、とりあえず48CUCで・・・・」
おっちゃん:「お前、何を言ってるんだ?1人25CUC、2人で50CUC、3人で75CUC、4人で100CUCだろう?」
りょう:「え?話が違うじゃないか。残りは俺が見つけるんだぞ?いいだろ?とりあえず明日の・・・」
おっちゃん:「だめだだめだ、帰れ帰れ!」

何がどうなったのか、おっちゃんとの交渉は白紙に戻されていた。見込みなしと見られたのだろうか、それとも統一料金を敷いているタクシー仲間からひんしゅくを買ったのか、買いそうなのか、町中で客引きを続けることで彼に何かまずい事が起きたのだろうか。よくわからない。

時計を見ると6:00前だ。夕飯の時間じゃないか!

結論

客引きは楽じゃないYO!

りょう の紹介

東京都品川区で生まれ育つ。サービス業、ホステスクラブ、海外ボランティア駐在員、レストランバー、コンピュータ会社などを経て独立開業。2011年から休業し、夫婦で1年ちょっとの世界一周へ。現在は帰国してイクメン父上に勤しむ。好きな食べ物はナス。言語や歴史に興味あり。コンプレックスは字が汚いこと。好きな言葉は「とりあえずビール」でポッドキャストでは世界のビールを飲み歩く「Beer the World(ビーアー・ザ・ワールド)」を担当。
カテゴリー: キューバ, トリニダー タグ: パーマリンク

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